塩漬けオリーブは黒の方がマイルドで食べやすい印象ですが、色で種類が違うわけではありません。成熟度に応じて実の色が緑から赤茶色、紫、黒へと変化して、味も栄養価も変わっていきます。黒の塩漬けオリーブには、あえて着色したものもあります。古代ギリシャの詩人ホメロスが「金の液」と呼んだオイルが抽出されるオリーブ。その種類は2000に及ぶとも言われます。今回旅をしているクロアチアは生産国としては規模が小さく、生産量で上位に入ることはありませんが、イタリアと国境を接するイストゥラ半島をはじめ、いたるところでオリーブとワイン用のぶどうが作られています。その多くが家族経営の小さな農家です。オリーブの収穫期はクロアチアの場合は10月初めから11月半ば。早めに収穫すると抽出できるオイルの量は少なくなるものの、黄緑色のオリーブの栄養価は黒く熟したものより高く、収穫後は酸化や発酵を避けてできるだけ早く処理します。適度な温度で潰して粘土状になったものを圧搾すると油と苦味のある水分が出てきて、上澄みにあたるのがオリーブオイルです。木や種類によって大きく異なるものの、6~7キロのオリーブから約1リットルのオリーブオイルが抽出されます。1本のオリーブの木は年間平均15〜50キロのオリーブをつけるとのこと。樹齢1000年にもなるオリーブの木ですが、この地方のあらゆるところに植えられているだけでなく、多くの家庭で盆栽のように鉢に植えています。家族経営の小さな農家でも、有機栽培で手摘みし、高品質のエクストラバージンオリーブオイルを作り、国際品評会で受賞しているのはとても有望です。量では存在感がなくとも、品質比べで肩を並べているというのは、むしろ競争力があると言うもの。アドリア海に面する小さな国クロアチアの産業として、赤い土をしたこの地域のオリーブが元気に育っていくといいですね。
Y.A.