EUセンター: ドイツ ハイデルベルク (2000年開設)
日々の暮らしでちょっと気になるテーマに注目!
ドイツで現地校に通う日本人の子どもなら、
動物愛護との関連で他の子から質問されたり
クラスで話題になったりしたことがあると思います。
捕鯨は日本の食糧確保に影響はないことから、
南極に出かけていって行う「調査捕鯨」は国際的に非難されており、
外国に住む日本人にも折に触れて提示される問題です。
伝統的に行われてきた沿岸捕鯨も漁の仕方が残酷であると言われたりもします。
捕鯨の規則に関しては、何世紀も鯨油のために捕鯨を行って
生息数を減らしてきた国々が主導して決めており、
政治的かつ感情的な問題が絡み合うものです。
個人的には需要と供給の関係から、長い期間をかけて
日本の捕鯨はなくなっていくのではないかと思っています。
現在はその過渡期にありますが、
かつてヒゲ以外のあらゆる部分を食べていた鯨食文化があったとはいえ、
日本の鯨食文化はかなり希薄になっています。
というのも、50年前の給食を知っている人ならいざ知らず、
今の子どもたちには鯨肉に対する懐かしさはなく、お目にかかることも少ない食材です。
実際のところ日本人の多くはもはやほとんど鯨肉を食べず、
消費量は長年減少し続けており、2015年の日本の鯨肉消費は1人当たりわずか30グラム。
さらに鯨肉の量が減っても需要が少ないため価格は上がらないそうです。
すなわち失われつつある食文化と言えるでしょう。
一方、伝統的な捕鯨の仕方が残酷であるという点については
改善の余地もあるかもしれませんが、
健康な動物の命を奪うという行為はそもそも残酷ではないかと思います。
ドイツにおける肉の一人あたりの消費量は過去20年間に渡り大きな変化はなく
年間約60キロです(日本人の一人当たりの年間食肉量はドイツ人の半分)。
ドイツの食文化では肉が多く、それは多くの動物が殺されているということになります。
しかし、その場合も「死に際して苦痛を与えていない」「畜産は人間が管理できる」
といった反論が上げられ議論はまとまりません。
一方、一国の食文化を短期間で変えるのは難しいというのは多くの人が理解できることです。
今回聞かれて困ったという子どもには、豚や牛を食べるのをやめてと言われたら
ドイツ人には難しくないかどうか聞いてみることを提案しました。
これからも日本人が行う捕鯨はドイツのクラスで話題に上がると思いますが、
子どもにも文化や立場の違いによる国際問題の深さを知ってもらう
きっかけになったらいいなと思います。